AIブームでSamsungが過去最高益 「AI時代のつるはし」を売るインフラ企業の台頭

生成AIのニュースというと、OpenAIやGoogleなど、AIモデルを開発する企業に注目が集まりがちです。しかし、AIブームによって大きな利益を得ているのは、AIサービスを提供する企業だけではありません。その裏側で欠かせない半導体を供給する企業にも、巨額の需要が流れ込んでいます。
Samsung Electronicsが7月30日に発表した2026年4~6月期の決算は、その流れを象徴する内容でした。売上高は171兆5,000億ウォン、営業利益は89兆5,000億ウォンとなり、いずれも四半期として過去最高を記録しました。売上高は前四半期から28%増加しています。
なかでも半導体を担当するデバイスソリューション部門は、127兆5,000億ウォンの売上高と89兆2,000億ウォンの営業利益を計上しました。会社全体の利益のほとんどを、半導体部門が生み出したことになります。
AIに必要なのは計算能力だけではない
生成AIは、大量のデータを短時間で処理します。その際に重要になるのが、演算を担うGPUなどのプロセッサーだけでなく、データを高速で受け渡すメモリーです。
特に注目されているのが、HBMと呼ばれる広帯域メモリーです。HBMは複数のメモリーチップを縦方向に積み重ねることで、大量のデータを高速で転送できるようにした製品です。
AIサーバーでは膨大な計算が繰り返されます。そのため、プロセッサーの性能が高くても、必要なデータを素早く供給できなければ、十分な性能を発揮できません。HBMは、AIの学習や高性能コンピューティングで必要になる高速なデータ処理を支える部品なのです。
Samsungは今回、サーバー向け製品を重視してAI需要に対応したことに加え、メモリー価格の上昇も記録的な業績につながったと説明しています。また、次世代製品であるHBM4の販売を拡大し、さらに先のHBM4Eについても主要顧客へのサンプル出荷を始めました。
AIブームの「つるはし」を売る企業
この決算から見えてくるのは、AIブームで利益を得る企業の範囲が広がっていることです。
生成AIの利用者が増えれば、AI企業はより多くの計算能力を必要とします。データセンターの増設が進めば、GPUだけでなく、メモリー、記憶装置、通信機器、電力設備、冷却装置などの需要も増えていきます。
AIサービスの表側では激しい競争が続いていても、その土台を支える製品には継続的な注文が入る可能性があります。
金を掘る人に「つるはし」を売るように、AIを開発する企業へ必要な部品を提供することでも、大きな利益を得られます。現在のAI市場でSamsungが販売している高性能メモリーは、まさに「AI時代のつるはし」と呼べる存在です。
Samsungだけでなく、韓国経済全体にも半導体需要の恩恵が表れています。韓国の7月の輸出は高い伸びが予想されており、その背景にはAI投資の拡大とメモリー価格の上昇があります。7月最初の20日間では、半導体輸出が前年同期比180.6%増加しました。
スマートフォン企業だけではないSamsung
一般の消費者にとって、SamsungはGalaxyシリーズを販売するスマートフォンメーカーという印象が強いかもしれません。
しかし、今回の決算では、スマートフォンとネットワークを担当する部門が7,000億ウォンの営業赤字となりました。部品価格の上昇が収益を圧迫したためです。一方、半導体部門は記録的な利益を上げました。
同じ会社の中でも、消費者向け製品とAIインフラ向け製品では、業績の方向が大きく異なっています。
これは、AIブームの中心が、私たちの目に触れるアプリやスマートフォンだけではなく、データセンターの内部にもあることを示しています。
普段は目にすることのない小さな半導体が、世界的なAI競争を支え、企業の業績や国の輸出額まで動かしているのです。
記録的な利益はいつまで続くのか
ただし、今回の好業績がそのまま長期間続くとは限りません。
半導体は、需要と供給の変化によって価格が動きやすい産業です。AI企業の設備投資が鈍化したり、各社の増産によって供給不足が解消されたりすれば、メモリー価格が下がる可能性もあります。
Samsungは2026年後半も、AIインフラへの投資やAIエージェントの普及によって、サーバー用DRAM、企業向けSSD、HBMの需要が強まると予想しています。その一方で、生産を増やしても供給制約は続くとの見通しを示しています。
今回の決算が教えてくれるのは、AIブームを理解するには、話題 of チャットサービスだけを見ていては不十分だということです。
AIが高性能になるほど、その裏側ではより多くの半導体、電力、通信設備が必要になります。AIサービスそのものよりも、それを支えるインフラ企業のほうが、安定して利益を得る可能性もあります。
AI時代に本当に利益を得るのは誰なのでしょうか。
その答えを探すときは、AIを作る企業だけでなく、AIを動かすための基盤を提供する企業にも目を向ける必要があります。
【参考・出典】